AI株の乱高下は「韓国が原因」なのか?ドットコムバブルと同じ物差しで測ってみました

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7月24日、日経平均は1,811円下げて64,611円で終わりました。同じ日、韓国のKOSPIは5.72%安。ナスダック100も1.46%下げています。

「今の乱高下は韓国市況が原因らしい」という話を聞きました。半導体の国だから、そこが崩れて世界に飛び火した、という筋書きです。

ところが、天井をつけた日付を並べてみると、順番が合いませんでした。


目次

天井の日付を並べると、韓国は後から落ちています

日付起きたこと
6月1日ナスダック総合が初めて27,000を超える
6月2日ナスダック総合が終値で史上最高値27,093.90。ここが起点になります
6月4〜5日中東情勢とインフレ懸念でハイテク売り。ブロードコムの弱い見通しで半導体指数が10%安、半導体だけで1.3〜1.4兆ドルが消えます
6月19日KOSPIが史上最高値9,385.59。米国の天井から17日遅れ
6月25日日経平均が史上最高値72,366.34円。前日比3,191円高(+4.6%)。マイクロンの好決算が手掛かり
7月2日サムスン電子とSKハイニックスが9%超安。CNBCはこれを「ウォール街から広がったチップ株の下落」と報じました
7月7日KOSPIが一時8%安。売買停止(サーキットブレーカー)が発動
7月8日日経平均66,819.05円。最高値から約8%下
7月13日KOSPIが7,000ポイントを割る
7月17日日経平均64,141円(2,694円安、−4.0%)。中国のAI関連の発表でナスダックも下げ、半導体指数が弱気相場入り
7月24日KOSPIが5.72%安。日経平均64,611.15円で、最高値から約11%下。アルファベットとテスラの決算に加え、紅海でのタンカー攻撃で原油が上昇

米国が先に天井をつけて、その17日後に韓国が天井をつけています。原因が韓国にあるのなら、韓国が先に落ちているはずです。

火元は別のところにありました。AI関連への設備投資が、投じた額に見合う回収になるのか、という疑いです。6月5日にブロードコムが弱い見通しを出した時点で、半導体はすでに売られていました。7月2日にサムスンとSKハイニックスが9%下げた日も、CNBCは「ウォール街から広がった」と書いています。矢印は米国から韓国へ向いていました。


韓国は原因ではなく、いちばん効きの強いレバレッジでした

では韓国の5.72%安は何だったのでしょうか。ここは無視していい話ではありません。むしろ、今回の下げの構造がいちばんはっきり出た場所でした。

2026年上半期、KOSPIの上昇率は101.14%で世界一位。半年で倍になった計算です。しかも2025年も75.53%上げていて、2年続けての大相場でした。

独特なのは、その中身です。

  • 外国人投資家は、上半期に過去最大となる約148兆ウォン(約15.5兆円)を売り越しています。ウォン安を避けるための売却が、その6割以上を占めました
  • 買い支えたのは韓国の個人投資家です。信用取引の借入残は2025年末の17兆ウォンから、2026年6月に過去最高の29兆ウォンまで膨らみました。ロイターはこれを「借入が限度に達している」と報じています
  • 上半期の収益率上位はレバレッジ商品が独占しました。TIGER 200ITレバレッジは764%、KODEX半導体レバレッジは494%
  • ウォンは2か月で1ドル1,483.3から1,549.4まで下げました
  • サムスン電子とSKハイニックスの2社で、KOSPI時価総額の半分前後に達しています。5月末には「2社で半分超え」と報じられました。SKハイニックスは年初来で188%上げ、サムスンはほぼ3倍。両社とも時価総額1兆ドルを超えました

つまり韓国市場は、「メモリ半導体という一点」に「信用取引という借金」で乗った状態でした。株価が上がるとレバレッジ資金が入り、それがまた株価を押し上げる。上がっている間はいちばん儲かる形で、逆回転が始まるといちばん速く崩れる形でもあります。

指数の集中には、おまけまで付いていました。ゴールドマン・サックスは、2社の比重がもう1%上がると、米国の投資会社法の分散規則に縛られた外国機関投資家が約20億ドルを強制的に売らなければならなくなる、と警告しています。上がることで売りが出る仕組みが埋まっていたわけです。

高値9,385.59から6,600割れまで、約30%。米国の下げ幅の何倍も深く落ちました。

そして韓国市場は、時差の上でアジアの早い時間に開きます。米国で夜のうちに出た不安が、翌朝いちばん最初に、いちばん大きい数字になって現れる。だから見出しの上では「韓国が引き金を引いた」ように見えてしまいます。

順番で言えば、韓国は原因ではありません。ただし増幅器としては強力で、体温計としてはよく効きます。信用取引で膨らんだ場所がどれくらい壊れているかを、毎朝いちばん早く教えてくれる相場です。


2000年に起きたのは「予想が外れた事件」ではありません

2000年に起きたことは、しばしば「インターネットへの期待が外れた事件」として語られます。実際は違いました。

ナスダック総合は2000年3月10日に5,048.62で天井をつけ、2002年10月9日に1,114.11まで落ちました。下落率は78%。天井を取り戻したのは2015年4月です。15年かかりました。

シスコシステムズは2000年3月に世界一の時価総額(約5,500億ドル)を持っていました。ネットワーク機器の会社ですから、インターネットが普及すれば必ず売れる商売です。その株は2002年秋までに約89%下げました。

ここが肝心なところです。インターネットが普及するという予想は、当たっていました。

トラフィックは実際に爆発しました。いまこの文章が届いている回線は、あのとき敷かれた光ファイバーの子孫です。予想は正しかった。それでも投資家は78%を失いました。

理由は3つあります。

回収の速さが足りませんでした。 通信会社は「いずれ足りなくなる」という前提で光ファイバーを大量に敷きました。ところが敷いた分のうち、実際に使われていたのは数パーセントしかありません。需要が追いつく前に帯域の価格が壊れ、ワールドコムもグローバルクロッシングも破綻しました。回線が要らなかったわけではありません。要るようになるまで、会社の体力が続かなかったのです。

売上の中身が貸付でした。 ルーセント、ノーテル、シスコは、顧客に金を貸して自社製品を買わせていました。ベンダーファイナンスと呼ばれる手法です。売上は伸びます。ただし現金は入ってきません。顧客が倒れれば、売上と貸付金が同時に消えます。

値段が物語の値段でした。 天井のナスダックの予想PERは100倍を超えていました。シスコもそうでした。物語が正しくても、100倍で買えば話は別になります。

2000年の教訓を一行にすると、こうなります。物語が正しいことと、その値段で買っていいことと、いま買っていいことは、別々の判断です。

もうひとつあります。損失は、技術のあるところではなく、借金と集中があるところに出ました。アマゾンは95%下げて生き残り、借金で回線を敷いた通信会社は消えています。


同じ物差しで2026年を測ってみます

同じ7つの物差しを、いまのAI相場に当ててみました。

見る場所2000年前後2026年
稼ぎ手に売上があるかドットコム企業の多くは売上そのものがなかったAWSは年率約1,500億ドルで+28%、Google Cloudは+63%、Azureは+40%、マイクロソフトのAI事業は年率370億ドルで+123%
値付け2000年3月のシスコは予想PER100倍超NVIDIAの予想PERは20倍台前半。2026年を通じて18〜25倍のレンジで動いています
投資と売上の開き2001年のテレコムで32%の乖離46%の乖離。設備投資が売上の45〜57%を占めます(電力会社並みの重さ)
資金の出どころベンダーファイナンス(顧客に貸して自社製品を買わせた)循環出資+オフバランスの借入。ハイパースケーラーの社債発行は2025年に1,000億ドルを超えました
需要の制約客がいなかった電気が足りない。マイクロソフトには電力制約で埋められないAzureの受注が約800億ドルあります
期待の水準S&P500の長期利益成長予想は18.6%20.2%。2000年の水準を超えました
会計の伸ばし方売上計上の前倒しサーバーの耐用年数を3〜4年から6年へ延長

上の3行は「2000年ほど酷くない」と言っています。下の4行は「2000年に似てきた」と言っています。

2026年のAI関連設備投資は7,000億ドル前後で、前年比36%増です。ゴールドマン・サックスは2026年に7,650億ドル、2031年に年1.6兆ドル、2026〜31年の累計で7.6兆ドルという絵を置いています。データセンターの建設費は1メガワットあたり1,000万ドルから1,500〜2,000万ドルへ上がりました。

支出の伸びは、売上の伸びより約50%速いペースです。バンク・オブ・アメリカの計算では、設備投資は配当と自社株買いを済ませた後の営業キャッシュフローの94%を食っています。

そして相場の反応が反転しました。設備投資の増額は、かつて「強気の証拠」として買われました。いまは売られます。Metaは設備投資見通しの引き上げを発表した日に9.25%下げました。同じニュースの意味が逆になったわけです。


私の診断:値段はバブルでした。事業はバブルではありません

AIそのものはバブルではありません。AI株の値段にバブルがありました。 そしていま起きているのは、その値段の巻き戻しです。

売上は実在します。マイクロソフトのAI事業は年率370億ドルで前年の2.2倍。Google Cloudの受注残は4,620億ドル。電力が足りなくて売れない注文が800億ドル積まれている状態は、2000年の「客がいない」とはまったく別の問題です。

危ないのは「AIが役に立たない」ではありません。AIは役に立つけれど、投じた金額に見合う速さでは回収できない、という形です。

これは2000年の光ファイバーとまったく同じ形をしています。回線は本当に必要になりました。ただし敷いた会社が回収する前に価格が壊れました。技術の勝敗と投資家の勝敗は、別々についたのです。


いちばん危ないのは技術ではなく、借金の置き場所です

今回いちばん気になったのは、株価でもPERでもなく、お金の借り方が変わったことでした。

これまでAI投資は自前の利益で払われていました。だから「バブルではない」と説明されてきました。その説明が崩れかけています。

帳簿の外に移り始めました。 データセンターを建てたいけれど、借金を自社の貸借対照表に載せたくない。そこでSPV(特別目的会社)や共同出資会社を作り、そこがプライベートクレジット(民間の貸し手)から借ります。MetaのHyperionは270億ドルをBlue Owlから調達しました。史上最大のプライベートクレジット案件です。

国際決済銀行(BIS)は2026年3月の四半期報告でこれを取り上げ、「影の借入(shadow borrowing)」と名付けました。経済的には借金と同じなのに、企業の貸借対照表の外側にある債務、という指摘です。プライベートクレジットのソフトウェア企業向け融資残高は、2015年の80億ドルから2025年末には5,000億ドル超(直接融資全体の19%)まで膨らんでいます。BISは、貸し手が悪い時ほど資金を引く「順循環」で動けば、下げを和らげるどころか増幅すると書いています。

償却の年数が伸びました。 クラウド大手は2023年に、サーバーの耐用年数の前提を3〜4年から6年へ延ばしました。3,000億ドル規模の設備に対して、年間約180億ドル分の償却費が軽くなった計算です。一方でNVIDIAは製品サイクルを2年から1年に短縮しています。同じGPUの償却年数が、CoreWeaveは6年、Nebiusは4年。同じ機械の寿命について、業界の中で答えが割れています。

満期と償却が重なります。 2023〜25年に組まれたGPU担保の借入は、2026〜27年に最初の大きな満期を迎えます。ちょうどその世代のGPUの償却負担がピークになる時期と重なります。

技術が失速しなくても、この3つが重なれば数字は傷みます。2000年に効いたのも、技術の失速ではなく借金の満期でした。


大家の言葉に翻訳すると、5つになります

ここまでは株の話です。家賃で暮らしている側にとって意味があるのは、次の5つだと考えています。

1. 耐用年数は「見せたい方向」に動きます

大家は建物の償却を早く取りたいので、年数を短く見たいわけです。中古の耐用年数を使い、躯体と設備を分け、なんとか償却を前に持ってこようとします。やり過ぎれば否認されます。

ハイテク企業はその逆をやっています。利益を大きく見せたいから、年数を長く見る。同じ資産でも、見せたい方向に年数が動くのです。決算の「利益」を読むときは、その裏にある年数の前提がどこにあるかを見ておきたいところです。この感覚は、償却で毎年数字を作っている側のほうが持ちやすいはずです。

2. データセンターのSPVは、一棟物件と同じ構造をしています

借りて建てて、テナントの支払いで返す。これは一棟収益物件そのものです。

違うのはテナントの数です。データセンターのテナントはAI企業1社であることが多く、つまり一棟まるごと1社サブリースと同じ形になります。稼働率100%に見えるのは、その1社が払い続けている間だけ。サブリース会社が飛んだときにどうなるかを考えるのと、同じ話です。

3. 「点灯率」は稼働率のことです

2000年に敷かれた光ファイバーは、満室想定で敷かれました。実際に使われたのは数パーセントでした。

GPUにも同じ問いが来ます。買った機械のうち、いつも動いているのは何割か。そして何年で陳腐化するか。稼働率と陳腐化を同時に外すと、収入は減って返済だけが残ります。満室想定と法定耐用年数で買った物件が、実際は稼働3割で設備が10年で壊れた——構造としては同じことです。

4. 損失はレバレッジと集中に出ます

韓国で起きたことは、技術の話ではありません。半年で101%上がった相場に、信用取引で一点集中した人が30%を食らった、という話です。

同じAI相場に乗っていても、現金で分散して持っていた人と、借金で一点に張った人では、結果がまったく違いました。決めたのは相場ではなく、持ち方でした。

5. 家賃で暮らす側に直接来るのは、AIではなく金利です

日本銀行は6月15〜16日の会合で、政策金利を0.75%から1.00%へ上げました。1%は31年ぶりの水準です。7月30〜31日の会合は据え置きの見込みですが、原油高でインフレが戻れば話は変わります。中東情勢と原油は、いまや融資条件の話になっています。

仮に借入2億円・残り30年・元利均等・変動金利1.5%だとします。

  • 金利1.5%:年間返済 約828万円
  • 金利2.5%:年間返済 約948万円
  • 差額:年約120万円(月約10万円)

満室年収1,800万円の物件なら、返済比率は46%から52.7%へ動きます。私は返済比率50%をひとつの目安に置いているので、金利1%の上昇でその線を割ることになります。

AIバブルが弾けるかどうかは当てられません。けれど、金利が1%上がったときに自分の物件がどうなるかは、今日の午後に電卓で出せます。


当てられないものと、決められるもの

整理すると、こうなります。

「韓国が原因」は順番が合いません。米国の天井が17日早く、7月2日の韓国株9%安もウォール街発と報じられています。韓国は原因ではなく、信用取引でいちばん膨らんでいた場所であり、だからいちばん深く落ちました。

2000年の教訓は「AIは幻だ」ではありません。インターネットは本物だったのに、投資家は78%を失い、回復に15年かかりました。物語の正しさは、値段の正しさを保証してくれないのです。

いまのAI投資は、売上のある会社が、電気が足りないほどの需要に対して、帳簿の外の借金で設備を建てています。前半は2000年と違い、後半は2000年に似ています。

そして家賃で暮らしている側にとって、AI株の行方は当てられない変数で、返済比率と金利耐性は自分で決められる変数です。当てられないものを予想する時間を、決められるものの計算に回したほうが、成績はよくなります。


この記事の数字の出どころ

  • 日経平均・KOSPI・ナスダックの水準と日付:日本経済新聞、Bloomberg、CNBC、StatMuse、TradingKey
  • サムスン電子・SKハイニックスの9%安と「ウォール街から広がった」との報道:CNBC(2026年7月2日)
  • 韓国市場の資金フロー(外国人の約148兆ウォン売り越し、信用取引残17兆→29兆ウォン、レバレッジETF収益率、ウォン相場):BigGoファイナンス、ロイター
  • サムスン電子・SKハイニックスの指数比重と強制売却の警告:Seoul Economic Daily、ゴールドマン・サックス
  • AI設備投資の規模と前提(2026年7,650億ドル、2026〜31年累計7.6兆ドル、1MWあたり建設費):ゴールドマン・サックス
  • 設備投資と売上の乖離(46%対32%)、資本集約度45〜57%、Metaの9.25%安:Forbes(2026年6月2日)
  • 期待利益成長20.2%対18.6%:Acadian Asset Management、Owen Lamont(Fortune、2026年6月8日)
  • 循環出資(OpenAI・NVIDIA・Oracle・AMD):日本経済新聞
  • 「影の借入」、社債発行1,000億ドル超、プライベートクレジットの融資残高:国際決済銀行(BIS)Quarterly Review 2026年3月「Financing the AI infrastructure boom: on- and off-balance sheet borrowing」
  • クラウド各社の売上・成長率・受注残、耐用年数の変更、GPU担保債の満期:各社開示にもとづく報道および分析
  • NVIDIAの予想PER:gurufocus、valueinvesting.io、finbox
  • 政策金利(2026年6月15〜16日会合で1.00%へ、7月30〜31日会合):日本銀行、三菱総合研究所、日本経済研究センター、日本経済新聞
  • 2000年前後のナスダック・シスコ・ベンダーファイナンス・光ファイバーの点灯率:公開されている市場史のデータ

株価・指数の水準は7月24日時点のものです。個別銘柄の売買を勧めるものではありません。返済計画はご自身の融資条件で計算してください。

※本記事は2026年7月時点の公開情報に基づきます。

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この記事を書いた人

不動産投資歴15年超 / 大家さん学びの会名古屋 支部代表 / AI 開発者 / 著書「FIREできる不動産投資3つのルール」(45才からいきなり始めて成功できる)。本名: 岡本 康 (ブルー・ソリューションズ株式会社 代表)。中立的立場で生成 AI ツール・不動産投資サービスをレビュー。

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