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1棟マンションの修繕履歴を、Claude Code に頼んで作りました。頼んでから46分で、出典つきの詳細版6頁と、1枚の簡易版ができています。
頼んだ文は1行です。その間にAIは、40本の書類を文字に起こし、要所の25枚は画像のまま確かめ、メールを13件読んでいました。
同じことを人の手でやると、どれだけの量になるか。記録に残っている数字は次のとおりです。
| 作業 | 量(2026年9月28日の記録) |
|---|---|
| 読む | 書類40本・232頁・約19万字(新書なら2冊ほど) |
| 探す | 4つのフォルダにある213のファイルを一覧に/Dropbox全体の約6万6千ファイルを名前で検索/メールは6回の検索に出た約100件から13件を選んで全文を読む |
| 突き合わせる | 会社の帳簿2期分の9,820行から、この物件の行を抜く/管理会社の収支報告書17か月分を、印字の合計と1円まで合わせる/表の金額34項目を、元の書類と照らし合わせる |
日本語を読む速さには、大学生200人を測った研究があります。平均は1分に653字でした(小林潤平・川嶋稔夫「日本語文章の読み速度の個人差をもたらす眼球運動」映像情報メディア学会誌 72巻10号、2018年)。
この速さで19万字を読むと、4時間54分。休まずに読み続けての時間で、AIが全部を終えた35分の8倍を超えます。
ただし、研究で測ったのは、ふつうの文章をふつうに読む速さです。今回の書類は、232頁のうち98頁がスキャンした画像でした。表の行は1,292あります。契約書の条文や、金額と日付が並んだ表は、小説と同じ速さでは読めません。
そのうえに、探す手間と突き合わせる手間が乗ります。どの書類に何が書いてあるかは、読んでみるまで分からないからです。
この1棟は、いま売却を進めています。売るときに仲介会社から求められる資料のうち、いちばん手間がかかるのが修繕履歴です。いつ、どこを、いくらで直したか。買主はそれを見て、次にどこへお金がかかるかを読みます。
この記録は、1か所にまとまっていることがまずありません。資料づくりはかなり大変な仕事で、今年の売却では Claude Code に任せています。いまは1棟ぶんの修繕履歴なら、1時間くらいでできるという感覚です。9月下旬に中のAIが Opus 5.5 へ切り替わってからは、作業がいっそう快適になり、正確さも上がったように感じています。
どこを探して、どう確かめたかは、9月28日の会話の記録にすべて残っています。
Claude Code とは
Anthropic社のAI「Claude」に、自分のパソコンのフォルダを直接扱わせる道具です。
チャットの画面に質問を打ち込む使い方とは違い、フォルダの中の書類を開いて読み、表を作り、検算までします。うちではGmailともつないでいるので、メールも探せます。
中で動くAIは、9月下旬から Opus 5.5 です。
関連:AIを使っている人どうしで、5年後に差がつく理由(チャットで聞く使い方と、フォルダを渡す使い方の違い)
売却で求められた資料
今回、仲介会社に出した資料は次のとおりです。
| 資料 | 中身 | 手元のどこにあったか | 作り方 |
|---|---|---|---|
| 物件紹介資料 | 立地・建物・収支の要点 | (下の資料から作る) | 概要書などの要点を数頁にまとめる |
| 物件概要書 | 立地・土地・建物・法規制・設備・収支、地図、写真 | 買ったときにもらった概要書 | 同じ様式を手本にして作り直す |
| 物件の調査書・周辺の家賃相場 | 周辺の売り出し・家賃の水準 | 自社で集めているデータ | 調査書として出力 |
| レントロール | 部屋ごとの賃料・共益費・契約日・保証会社 | 管理会社の明細・賃貸借契約書 | 契約書の原本と1室ずつ照らし合わせる |
| 固定資産税の課税明細書 | 土地・建物の評価額と税額 | 市から届く納税通知書 | 原本をそのまま |
| 修繕履歴 | 何を・いつ・いくらで | 8か所に分散(次の章) | 12の手順(その次の章) |
物件概要書は、買ったときに仲介会社からもらった概要書の様式を手本にしています。概要、広域の地図、詳しい地図、写真、賃貸借の一覧、収支の6頁です。地図は国土地理院の地理院タイルを使いました。住宅地図は商用で使うのに許諾が要るためです。
レントロールは、管理会社の明細だけで作ると、契約の中身がずれていても気づけません。賃貸借契約書の原本と1室ずつ照らし合わせ、家賃債務保証会社の名前まで確かめています。
入居者の氏名は出しません。うちのレントロールの台帳は氏名の列を隠したままPDFに書き出すので、出した資料に名前は載りません。
修繕の記録は、8か所にあった
1棟の修繕の記録が、どこにあったかの一覧です。
| 時期 | 資料 | 書いてあったこと | 「修繕」で検索して出るか |
|---|---|---|---|
| 買う前 | 買うときにもらった物件紹介の表 | 共用部の塗装 | 出ない(画像のPDF) |
| 買う前 | 重要事項説明書 | 修繕履歴の欄、室内の改修工事 | 出ない(画像のPDF) |
| 買う前 | 設備の定期検査報告書 | 部品を最後に交換した日 | 出ない(画像のPDF) |
| 買う前 | 買うときの仲介会社とのメール | 給湯器とエアコンの扱い | メールの検索で出る |
| 買ったあと | 管理会社の毎月の収支報告書 | 修繕の支出 | 月ごとに抜き出す |
| 買ったあと | 会社の帳簿 | 帳簿とメールにしか出てこない小さな工事 | 物件の行を抜く |
| 買ったあと | 管理会社とのメール | 見積りと実際の発注の違い | メールの検索で出る |
| 買ったあと | 別のフォルダにあった見積書 | 工事の見積り | ファイル名を広げて探すと出る |
「修繕」という名前のファイルは1つもありません。
買う前の記録のうち3つは、スキャンした画像のPDFでした。画像のPDFは文字を持っていないので、パソコンで「修繕」と検索しても引っかかりません。人が1頁ずつめくらないと見つからない場所です。
修繕の記録は、もともと別々の相手から、別々の形で届きます。仲介会社、前の管理会社、今の管理会社、設備の点検会社、税理士事務所。フォルダの整理が悪いから散らばるわけではありません。
ほかの物件で見つかったこと
8月に、ほかの物件とまとめて修繕履歴を作ったときにも、似たことが起きていました。
- 修繕履歴の本体が、前の所有者あての請求書の綴りだった。 数十枚の画像のPDFで、ファイル名にも中身の検索にもかからない。外壁塗装の金額はそこにしか無かった
- 同じ請求書が2枚ずつ綴じられている箇所があった。 そのまま足すと二重に数える
- 物件状況報告書(告知書)の「修繕履歴に関する資料」に「無」の印があった。 実物は別に渡っていた。告知書を信じると見落とす
- 管理会社の送金明細が、すべてスキャンの画像だった。 何室かを一斉にリフォームした年の金額は、メールにしか無かった
- 送金明細の補修費の欄が、途中の年から様式が変わっていた。 変わったあとは明細から抜けず、帳簿と個別の見積書で埋めた
どれも、フォルダの中を「修繕」で検索するだけでは出てきません。
頼み方の文
Claude Code に頼んだ文は、1行です。
この物件の修繕履歴をつくってください。所有物件のフォルダからも、以前の修繕情報を探してください。
同じ依頼の頭に、仲介会社への送付の確認も付けました。
仲介会社の担当者に、今年度の課税明細書はメールで送っていますか。
答えは1分で返ってきました。送ったのは少し前です。添付したファイルと手元の原本が同じものかどうかまで、照らし合わせてありました。
そのまま使える形にすると、次の4つです。〇〇のところを差し替えれば使えます。
〇〇(物件名)の修繕履歴をつくってください。所有物件のフォルダ、メール、帳簿からも、以前の修繕情報を探してください。
見つからなかった資料があれば、どこに何が無かったかを一覧にしてください。
〇〇さん(仲介会社)に、〇〇はメールで送っていますか。送った添付が、手元の原本と同じファイルかも確かめてください。
何を・いつ・いくらで、が1枚で分かる簡易版も作ってください。
2つ目と3つ目の後半は、今回は頼まなくても確かめてありました。書いておけば確実です。
Claude Code がたどった12の手順
会話の記録に残っている手順です。
1. 前回のメモを読む
8月に修繕履歴を作ったとき、どの物件のどの資料に何があったかを、メモに書き残していました。今回はそこから始めています。探す場所の地図が先にある状態です。
2. フォルダを中身ごと一覧にする
所有物件のフォルダ、会社の明細のフォルダ、売却用のフォルダ。3つを、ファイルの大きさと日付つきで全部書き出しました。
3. PDFを文字に起こす
売買契約書、重要事項説明書、管理委託契約書、設備の点検報告書、見積書、明細など、40本を文字に起こしています。圧縮ファイル(ZIP)の中にあるPDFも開きました。
4. 修繕の言葉で検索する
起こした文字を、「修繕・修理・補修・塗装・防水・改修・交換・給湯・エアコン・漏水・雨漏り・リフォーム・原状回復」などの言葉で検索しています。1つの言葉では拾えないので、20ほどを一度にかけます。
5. 画像のPDFは、ページを画像にして読む
スキャンした画像のPDFも文字に起こし、要所の頁は画像のまま見て確かめました。25枚です。物件紹介の表にあった共用部の塗装も、設備の部品の交換日も、ここで確かめています。
6. ファイル名を広げて、パソコン全体を探す
物件名は1通りではありません。カタカナ、半角カナ、英語、フォルダ名の書き間違い、所在地の町名。これを全部使って、Dropbox全体をファイル名で探しました。物件のフォルダとは別の「工事見積書」のフォルダに、見積書が1本ありました。
7. 帳簿から、その物件の行だけを抜く
会計ソフトから書き出した帳簿(総勘定元帳)から、この物件に関係する行だけを抜いています。ゴミ置き場のネットのような小さな工事は、帳簿とメールにしか出てきません。
8. 管理会社の収支報告書から、毎月の支出を抜く
毎月の収支報告書の支出の欄を抜き出し、印字されている支出の合計と1円まで合うかを、月ごとに確かめています。抜き出しの漏れがあれば、ここで合わなくなります。
9. メールを検索して読む
Gmailを6回検索し、13件のやり取りを読んでいます。物件名と修繕の言葉と期間を組み合わせ、買う前の期間は当時の仲介会社のメールアドレスでも探しました。
10. 買ったときの圧縮ファイルを開く
買ったときに仲介会社から届いたZIPの中身を確かめています。重要事項説明書の付属書類が入っていないかを見るためです。
11. 表を組み、数字と見た目を検査する
表を組んでPDFにしたあと、次の検査をかけています。
- 表の金額34項目を、元の資料と突き合わせる
- わざと1か所の金額を変えた写しと、1行消した写しを作り、検査がその違いを見つけることを確かめる
- 頁からはみ出していないか、頁数が合っているか
- 日本語が崩れていないか
2つ目は、検査そのものが効いているかの確認です。いつも「合格」と出る検査では、間違いがあっても通ってしまいます。
12. 在り処をメモに残す
見つかった資料の場所と、見つからなかった資料を、次のためのメモに書き残しています。次に同じ物件の資料を作るときは、手順1がここから始まります。
頼んでから詳細版の6頁ができるまでが35分、その間の操作は150回ほどです。
見積書だけで作ると、やっていない工事が載る
12の手順のうち、いちばん効いたのは9番のメールです。
ある部屋のリフォームは、見積書ではエアコンの交換が入っていました。実際の請求は、見積りより安くなっています。見積りを受けたあと、管理会社に「エアコンなしで」と返信していたからです。
8月の時点の表には「エアコン交換」と書かれていました。実際には交換していません。
発注した中身は、見積書ではなくメールの返信にあります。見積りの金額と請求の金額の差も、メールと明細を合わせて読めば分かります。見積書の束だけを渡して表を作らせれば、やっていない工事が修繕履歴に載るということです。
無いものを、先に知る
見つからないものも、はっきりしました。
重要事項説明書には、付属書類として見積書が3点付いていると書いてあります。その写しが、Dropboxにも、パソコンのダウンロードのフォルダにも、Gmailにもありませんでした。当時のメールの添付は期限付きのダウンロードのリンクで、もう開けません。
買主から「この見積書は?」と聞かれてから探すと、返事が遅れます。無いと先に分かっていれば、当時の仲介会社に写しを頼めます。
「見つからなかったもの」の一覧は、見つかったものの一覧と同じくらい役に立つ資料です。
詳細版と簡易版の使い分け
できあがった詳細版は6頁で、出典まで付いています。どの資料の何頁に書いてあったか、所有と管理の経緯、点検の結果、設備ごとの修繕の分担まで入れました。
これを見て、Claude Code に聞きました。
出典も書く必要があるかな? まだ買付ももらっていないので、詳細な情報はいらないかも。
答えは私の考えと同じでした。買付の前は、「何を・いつ・いくらで」が1枚で分かれば足ります。出典つきの詳細版は、買付をもらってから、または求められたときに出します。
4分後に、1枚の簡易版ができました。金額17項目を詳細版と突き合わせてあります。最初に頼んでから46分です。
| 簡易版 | 詳細版 | |
|---|---|---|
| 頁数 | 1枚 | 6頁 |
| 中身 | 何を・いつ・いくらで | +出典(資料名と頁)・所有と管理の経緯・点検の結果・設備の修繕の分担 |
| 出す時期 | 買付の前 | 買付のあと、または求められたとき |
送った資料を、相手ごとに管理する
仲介会社が複数になると、どちらに何を送ったか、すぐに分からなくなります。
うちでは、送るたびに相手ごとのフォルダを作り、名前に日付を入れています。中に入れるのは「何を送ったか」の一覧1枚です。
提出資料_〇〇さん_日付/
00_資料一覧.txt
01_物件紹介資料.pdf
02_物件概要書.pdf
…
こうしておくと、「課税明細は送った?」と聞けば、メールとフォルダの両方から答えが出ます。
もう1つ気をつけているのは、古い版が相手の手元に残ることです。今回も、先に送った物件紹介資料の修繕の記載は、作り直す前の内容でした。新しい修繕履歴には「記載が異なる箇所は本書を正とする」と書き添えています。
Opus 5.5 になってから
8月に、ほかの物件とまとめて修繕履歴を作ったときは、何回かに分けて作りました。そのときの版では、この物件の買う前の記録は1行しか載っていませんでした。
9月28日は、頼み方に「所有物件のフォルダからも探して」と1行足しています。8月の作業で残したメモから始められたことも大きいです。
そのうえで、Opus 5.5 へ切り替わってから、正確さが上がったような気がしています。
Claude Code の良いところは、書類の整理と、膨大な資料の中から新しい資料を作ることです。OpenAI の Codex でも、同じことはできると思います。
探すのはAI、決めるのは自分
資料を作る手間は、AIに任せてよい仕事だと考えています。探して、読んで、突き合わせる作業は、資料が多いほど人の目では見落とします。「エアコン交換」も、見積書だけを見ていれば、そのまま買主に渡っていました。
ただし、何を出すか、どこまで出すかは自分で決めます。詳細版をまだ出していないのは、私の判断です。
手順と時間は、Claude Code の会話の記録(2026年9月28日 18時11分〜18時57分)から数えました。
※本記事は2026年10月時点の公開情報に基づきます。
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