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やっしー隊長です。
去年、所有しているアパートの外壁塗装をやりました。
見積もりを頼んだ業者が現地調査に来て、屋上に上がったところで、防水シートがめくれて破れているのが見つかりました。足場を組む前、まだ何も決まっていない段階です。台風か、強風か。原因までは特定できていません。
これが火災保険の風災の扱いになり、工事費のある程度の部分を賄えました。
地上から見上げていて気づけるものではありませんでした。屋上は、上がらないと分かりません。
もうひとつ、大家をやっていれば、いつか出くわす場面があります。アパートの前に軽トラックが停まっていて、「近くで工事をしていたら、お宅の屋根が気になったので」と言われる。
人が来て、建物を見る。やっていることは、現地調査と同じに見えます。
違うのは向きです。
1. 訪問販売の相談は減り、「点検させてください」は増えている
国民生活センターが、全国の消費生活センターに寄せられた相談をPIO-NETという仕組みで集計して公開しています。2026年7月31日時点の数字です。
訪問販売によるリフォーム工事の相談件数
| 年度 | 件数 |
|---|---|
| 2023年度 | 11,879件 |
| 2024年度 | 9,839件 |
| 2025年度 | 5,544件 |
点検商法の相談件数
| 年度 | 件数 |
|---|---|
| 2023年度 | 12,550件 |
| 2024年度 | 19,249件 |
| 2025年度 | 19,696件 |
リフォーム工事の訪問販売の相談は、3年で半分以下になりました。同じ3年で、点検商法の相談は1.6倍です。2025年度の19,696件というのは、1日あたり54件。全国のどこかで、毎日それだけの人が相談窓口へ電話をかけている計算になります。
点検商法というのは、点検を口実に建物を見せてもらい、その場で不安をあおって契約につなげる手口を指します。「工事を売りに行く」形から、「点検をさせてほしいと言って入る」形へ、入口が移ったように見える数字です。
賃貸物件が厄介なのは、所有者が現地に住んでいないことでしょう。玄関先の会話が入居者や管理会社を経由するぶん、話が耳に入るのが遅れます。
こちらから業者を呼ぶには、自分の建物が何年目に何をやる建物なのかが分かっている必要があります。
2. 国土交通省が出している周期の表
国土交通省が、外壁や屋根を何年ごとに塗り替えるかの目安を表にして公開しています。分譲マンションの管理組合が長期修繕計画を作るための手引きですが、建物が傷む速さは所有の形で変わりません。出典は「長期修繕計画作成ガイドライン」(平成20年6月/令和6年6月改定)の84ページ、「修繕周期の例」です。
| 部位 | 工事の内容 | 周期 |
|---|---|---|
| 外壁塗装(雨掛かり部分) | 塗替 | 12〜15年 |
| 外壁塗装(雨掛かり部分) | 除去・塗装 | 24〜30年 |
| 外壁塗装(非雨掛かり部分) | 塗替 | 12〜15年 |
| 軒天塗装 | 塗替 | 12〜15年 |
| シーリング | 打替 | 12〜15年 |
| タイル張補修 | 補修 | 12〜15年 |
| 躯体コンクリート補修 | 補修 | 12〜15年 |
| 屋上防水(保護・露出) | 補修・修繕 | 12〜15年 |
| 屋上防水(保護・露出) | 撤去・新設 | 24〜30年 |
| 傾斜屋根 | 補修・修繕 | 12〜15年 |
| バルコニー床防水 | 修繕 | 12〜15年 |
| 開放廊下・階段等床防水 | 修繕 | 12〜15年 |
| 鉄部塗装(雨掛かり部分) | 塗替 | 5〜7年 |
| 鉄部塗装(非雨掛かり部分) | 塗替 | 5〜7年 |
| 非鉄部塗装 | 清掃・塗装 | 12〜15年 |
| 共通仮設・直接仮設 | ― | 12〜15年 |
鉄部だけ、けた違いに短いのが分かります。
鉄部というのは、屋外階段、手すり、メーターボックスの扉、物干し金物、玄関ドアの枠まわりです。木造アパートでも、鉄骨階段が付いていれば同じ扱いになります。
外壁の話ばかりしていると、この5〜7年が抜け落ちがちです。抜け落ちた鉄部は、次に手を入れるとき塗装では済まないことがあります。ガイドライン自体、屋外鉄骨階段を塗装とは別に「建具・金物等」という項目に立てているほどです。塗り替えの話と、取り替えの話は、最初から別枠になっています。
なお、この周期はあくまで目安として示されたものです。ガイドラインは、仕様や立地条件、劣化状況の調査結果に応じて設定するもの、という趣旨を本文で繰り返しています。海沿いと内陸で同じにはなりません。
3. 足場は「1回いくら」ではなく「何回組むか」
さきほどの表で、いちばん上に仮設が入っていたことに気づいた方もいるはずです。共通仮設と直接仮設が、どちらも12〜15年で並んでいます。
ガイドラインは83ページで、修繕の時期について、早すぎれば不要な工事になり、遅すぎれば劣化が進んで工事費が増える、と書いています。そのうえで挙げているのが、工事をまとめれば直接仮設や共通仮設の設置費用が軽くなる、という経済的なメリットです。
外壁塗装、屋上防水、シーリング打替、鉄部塗装。これらを別々の年にやれば、そのたびに足場代がかかります。仮設が独立した項目として、外壁塗装と同じ12〜15年の欄に並んでいるのは、そういう並びです。
一方で、集約しすぎると修繕積立金が一時的に足りなくなる、という注意もガイドラインには書かれています。分譲マンションの管理組合の話ですが、賃貸でも事情は変わりません。手元の現金を超えて工事をまとめれば、資金繰りのほうが先に詰まります。
4. 見積書の抜けは、国の様式で見つかる
同じガイドラインには「調査・診断の概要」という様式(様式第2号)が付いていて、建物を17の区分に分けています。そのうち建物の外まわりに関わるのが、次のところです。
- 2 屋根防水 ── ①屋上防水(保護) ②屋上防水(露出) ③傾斜屋根 ④庇・笠木等防水
- 3 床防水 ── ①バルコニー床防水 ②開放廊下・階段等床防水
- 4 外壁塗装等 ── ①躯体コンクリート補修 ②外壁塗装(雨掛かり部分) ③外壁塗装(非雨掛かり部分) ④軒天塗装 ⑤タイル張補修 ⑥シーリング
- 5 鉄部塗装等 ── ①鉄部塗装(雨掛かり部分) ②鉄部塗装(非雨掛かり部分) ③非鉄部塗装
見積書を受け取ったら、この並びと突き合わせます。
金額の違う見積書が2枚あったとき、まず疑うのは単価ではなく項目の数です。「こちらにはシーリングの打替が入っていない」「軒天が抜けている」は、この表さえあれば気づけます。単価の妥当性は素人には判断しづらいものですが、項目が有るか無いかは誰にでも数えられます。
そして、抜けている項目は消えたわけではありません。工事が始まってから「ここもやらないと持ちません」という形で戻ってきます。足場が組まれた後で追加を断るのは、なかなか難しいものです。
5. 保険の話には、線がある
冒頭に書いた屋上の破損は、火災保険の風災の扱いになりました。ここには線があります。
保険金の請求は、加入者本人がやります。 国民生活センターは2021年9月2日に注意喚起を出しました。申請サポートを受ける前に損害保険会社へ連絡すること。保険金の請求は加入者自身で行うこと。この2つが柱です。「保険金が使える」と勧誘してくる修理業者の手数料は、40パーセント程度という水準が報告されています。日本損害保険協会も、業者と契約する前に契約中の損害保険会社か代理店へ相談するよう案内しています。
経年劣化は対象になりません。 損害保険協会は、自然の消耗もしくは劣化、さびなどによって生じた損害は支払いの対象にならない、と明記しています。風で破れたのか、年月で傷んだのか。その判断をするのは保険会社です。
だから順番は、工事の契約が先ではありません。破損が見つかったら、まず自分で保険会社に連絡する。それからです。
外壁塗装に踏み切ったきっかけ自体は、はっきりした根拠のあるものではありませんでした。外観がくたびれてくると入居率に響くのではないか、という程度の感覚です。数字で確かめたわけではありません。
あとから振り返って大きかったのは、その感覚で動いたことより、現地調査のときに屋上まで見てもらったほうでした。
冒頭の話に戻ります。点検商法と現地調査は、やっていることが同じに見えます。違うのは向きです。向こうから来て「見せてください」と言うのか、こちらが呼んで「ここも見てください」と頼むのか。呼んだ側は、見てほしい場所を指定できます。契約を急ぐ理由もありません。
そして現地調査は、見積もりを取る過程の一部なので、費用はかかりません。
6. 相見積もりをどう取るか
自分で探すなら、地元の塗装店を3社ほど回るのがいちばん確実です。施工実績を見せてもらい、下請けに出すのか自社の職人が入るのかを聞く。この2つを聞くだけで、話せる相手かどうかはだいたい分かります。
ただ、大家が本業を持っていると、平日の日中に3社を回る時間が取れないことのほうが多いはずでしょう。
その場合の入口として、一括見積もりのサービスがあります。
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どちらの入口を使うにしても、現地調査を頼むときに伝えておくことは同じです。
- 屋上と屋根も見てほしいと、こちらから頼む
- 鉄部(屋外階段、手すり、扉まわり)の状態も一緒に見てもらう
- 見積書は、様式第2号の区分と突き合わせて項目の抜けを数える
見に来た業者が出してきた見積書を突き合わせる作業は、どちらの入口でも変わりません。比較する相手が増えるだけで、見る場所は同じです。
まとめ
去年やってみて、手元にあると強かったものを4つ。
- 現地調査で屋上まで見てもらう。事故による破損が見つかったら、業者ではなく自分で保険会社に連絡する
- 外壁塗装は12〜15年、鉄部塗装は5〜7年。鉄部のほうが2倍以上早く回ってくる
- 足場は工事ごとにかかる。外壁・屋上防水・シーリング・鉄部をまとめれば、仮設費は1回で済む
- 見積書は総額でなく項目数から見る。国交省の様式第2号の区分と突き合わせれば、抜けは数えられる
築何年かは、こちらがいちばんよく知っています。表と突き合わせて、次の塗り替えがいつごろ来るかを自分で置いておく。それだけで、突然の訪問にも「うちは3年後の予定です」と返せます。
言い値で決まっていた会話が、予定の確認で済むようになるはずです。
数字の出典
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(平成20年6月/令和6年6月改定)― 修繕周期の例(84ページ)、修繕周期の設定(83ページ)、調査・診断の概要 様式第2号
- 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」相談件数(PIO-NET、2026年7月31日時点)
- 国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!―申請サポートを受ける前に、損害保険会社に連絡を 保険金の請求は、加入者ご自身で!!―」(2021年9月2日)
- 日本損害保険協会「住宅の修理などに関するトラブルにご注意」
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