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Haro収益不動産データ解析シリーズ 第2弾
やっしー隊長(収益不動産データ分析 Haro / ブルー・ソリューションズ株式会社)/ 集計 2026年6月
このシリーズについて
不動産投資の世界には、「なんとなくの通説」が多すぎる。前回(第1弾)は、「いまは全国的に値上がりしている」という通説を、私たちが運営する収益不動産プラットフォームHaroの物件データベース「R-DX」の統計分析データ(一棟もの約17.9万件・日次更新)で検証した。答えは「全国一律ではなく、二極化していた」。福岡市・名古屋市のように人が集まる街は値上がりし、人が減る街は割安化していた——という話だった。
第2弾のテーマは、そこから一歩踏み込む。「その物件、何社が載せているか」だ。
地味なテーマに聞こえるかもしれない。でもこれは、あなたが買い手として損をするかどうかに直結する、かなり生々しい話である。さっそく、ひとつの「衝撃的な数字」から始めたい。
約18万件のうち、7割は「1社しか載せていない」
Haroには、いま約17.9万件の一棟収益物件が入っている。これを「1つの物件を、何社の不動産会社が掲載しているか」で数え直してみた。
すると、こんな数字が出た。
1物件あたり、平均1.82社。そして全体の71.8%——約7割は、たった1社しか載せていない。
「当たり前では?」と思うかもしれない。でも、考えてみてほしい。本当に条件の良い物件なら、複数の不動産会社がこぞって売りたがり、いろんなサイト・いろんな会社で見かけるはずだ。逆に1社しか扱っていない物件は、その1社が情報を握っている=あなたが他社と比較できないということでもある。
しかも、この「重なり方」は、街によってまったく違った。そしてその違いは、第1弾で見た「価格(利回り)」と組み合わせると、ある異常な街を浮かび上がらせた。この記事は、Haroの実データだけで、その謎を解いていく。
まず、グラフの読み方を3つだけ
ここを外すと話が全部ひっくり返るので、先に土台を固める。
ルール1:横軸=「業者の重なり」。右にいくほど情報がオープン。
1つの物件の掲載に関わった不動産会社の数(同時に載せているケースも、時間差で扱いが入れ替わったケースも含む)の平均だ。数字が大きい=たくさんの会社が同じ物件を扱っている=あなたが比較・相見積もりしやすい「開かれた市場」。数字が1に近い=単独掲載=その1社しか情報を持っていない「閉じた市場」。
ルール2:縦軸=掲載利回り。上にいくほど割安、下にいくほど高い(過熱)。
これは第1弾と同じ。利回りが低い(下)=価格が高い=人気で過熱しているエリア。利回りが高い(上)=割安だが、その高さは需要の弱さの裏返しでもある。
ルール3:単独掲載には、2つの意味がある。
ここが今回いちばん大事だ。「1社しか載せていない」には、まったく別の理由が2つある。
- ①薄商い:そもそも取引が少ない地方で、扱う会社も少ないだけ。
- ②情報の囲い込み:人気エリアで需要はあるのに、1社が情報を抱え込んでいる。
①は仕方ない。問題は②だ。そして、この2つを見分けるカギこそ「価格(利回り)との組み合わせ」——つまりこのグラフなのである。
この3つを持って、4つの象限を見ていこう。
謎① まず”健全な街”を見る —— 首都圏は「高いけど、オープン」
グラフの右下を見てほしい。横軸の右(業者がよく重なる=オープン)で、縦軸の下(利回りが低い=高い・過熱)。ここに固まっているのは、すべて首都圏だ。
- 相模原市:1物件を平均2.94社が掲載(利回り8.01%)
- 横浜市:2.77社(7.86%)
- 川崎市:2.56社(7.57%)
- 千葉市:2.48社(8.40%)
- さいたま市:2.14社(7.78%)
首都圏の物件は確かに高い(利回りが低い)。でも、1つの物件を2〜3社が扱っている。つまり買い手から見れば、複数の会社に問い合わせて、価格やレントロール(賃料表)を見比べられる。高いけれど、情報はフェアに開かれている。これが市場として「健全」な状態だ。
東京23区は利回り7.18%で全エリア最低(=最も高い)、重なりは1.94社。価格の天井であると同時に、それなりに情報は回っている。「高い街は、業者もよく重なる」——これが普通の姿である。
謎② 異常な街 —— 福岡市と名古屋市は「高いのに、閉じている」
さて、ここからが本題だ。グラフの左下——「利回りが低い(高い・過熱)」のに「業者が重ならない(単独掲載が多い)」という象限を見てほしい。
普通なら、ここは空っぽのはずだ。高くて人気の街なら、首都圏のように業者がたくさん群がるからだ。ところが、ここにポツンと1つ、大きなバブルがある。
福岡市。利回り7.48%(首都圏並みに高い)。なのに、業者の重なりはわずか1.33社。
これは地方の過疎エリア並みの「単独掲載」の薄さだ。第1弾で「人口増の最優等生」として値上がりが裏取りされた、あの福岡市が、である。すぐ隣には名古屋市(1.74社・7.72%)もいる。リニアで沸く、あの名古屋だ。
なぜ、人気で高い街なのに、情報が閉じているのか。
思い出してほしい。ルール3の②「囲い込み」が起きるのは、需要があるのに情報を抱え込める環境だ。福岡・名古屋は第1弾で見たとおり、人口が増え、再開発が進む強烈な売り手市場。売り手市場では、不動産会社は無理してたくさんの会社に情報を流さなくても、自社の客付けだけで十分に売り切れてしまう。だから情報が広がりにくい。
買い手から見れば、これはいちばん不利な状況だ。価格は首都圏並みに高い。なのに、扱っている会社が少ないから比較できない。「この値段、妥当なの?」を確かめる相手がいないまま、人気の波に押されて買うことになる。
「高いのに情報が閉じている」街——ここが、買い手が最も足元を見られやすい場所だ。
これが、グラフの左下が教えてくれる最大の発見である。
謎③ では地方の”単独掲載”は、同じ問題なのか?
ここで早合点を防ぎたい。グラフの左上——「業者が重ならない(単独掲載)」かつ「利回りが高い(割安)」エリアにも、たくさんの街が並んでいる。
- 新潟市:1.35社(利回り12.65%・全エリア最高の高利回り)
- 北九州市:1.37社(11.26%)
- 浜松市:1.37社(9.55%)
- 熊本市:1.39社(9.12%)
これらも「単独掲載」だ。では福岡と同じ「囲い込み」かというと——違う。これはルール3の①「薄商い」のほうだ。第1弾で見たとおり、新潟・北九州は人口減少エリア。そもそも取引が少なく、扱う不動産会社も少ない。だから自然と1社単独になる。情報を「抱え込んでいる」のではなく、「広げる相手がいない」のだ。
同じ”1社しか載せていない”でも、福岡(高い×単独)と新潟(割安×単独)では、意味が正反対——これが今回いちばん面白いポイントである。だからこそ、横軸(重なり)は縦軸(価格)とセットで見ないと誤読する。価格を見ずに「単独掲載=危ない」と決めつけるのも、また早計なのだ。
ちなみに割安化サイドの優等生神戸市(1.78社・10.41%)は、ちょうど中間。第1弾で「人口減+大阪のベッドタウン化で割安化(★本物)」と裏取りした街で、重なりも全国平均(1.82)並み。価格が下がってきた分、業者の動きも普通に戻っている、と読める。
謎④ そしてもう一つの不均衡 —— 「2.5万社のうち、上位100社で4割」
最後に、業者そのものの「数」も見ておきたい。Haroのデータに掲載がある不動産会社は全国で約2.5万社。ところが——
掲載数の上位100社だけで、全掲載の約42%を占めている。
残りの2.4万社あまりで、残り6割を分け合っている計算だ。つまり業界は、一握りの大量掲載プレイヤーと、大多数の零細プレイヤーに分かれている。
物件側から見ても不均衡は同じで、1物件を10社以上が奪い合う”過熱物件”が約3,600件(全体の2.0%)ある一方で、7割は単独掲載。「みんなが見ている物件」と「1社しか知らない物件」の差は、想像以上に激しい。
謎の答え合わせ —— 「重なり」は、情報の透明度メーターだ
整理しよう。「1物件を何社が載せているか」は、その街の情報がどれだけ開かれているかを測るメーターだった。
- 右下(首都圏):高い、でも業者がよく重なる=情報はオープン。比較できる。
- 左下(福岡・名古屋):高いのに業者が重ならない=情報が閉じている。比較できない=買い手が最も不利。
- 左上(新潟・北九州など):割安で単独掲載=これは「囲い込み」ではなく「薄商い」。
- 右上(割安×オープン):理屈の上ではここが理想だが、現実にはほぼ存在しない。
買い手・投資家として、どう使うか。答えはシンプルだ。「単独掲載の物件ほど、自分で相場を確かめる」こと。とくに福岡・名古屋のような”高くて単独”の物件は、提示された価格や利回りを鵜呑みにせず、近隣の似た物件のデータと突き合わせる。逆に首都圏のように業者がよく重なる市場では、面倒でも複数社に当たれば、それだけで比較材料が手に入る。
第1弾は「街ごとに価格の動きが違う」という話だった。第2弾はそこに「街ごとに、情報の開かれ方まで違う」という層を重ねた。価格だけでなく、その価格情報がどれだけ信用できる環境で出てきたのか——そこまで見て、はじめて勝負になる。
このデータは、どこから来ているのか —— Haro 収益不動産 統計分析データ
この記事のすべての数字は、私たちが運営する収益不動産プラットフォームHaroの物件データベース「R-DX」に蓄積した統計分析データから来ている。一棟収益物件 約17.9万件を毎日更新し、価格・利回り・エリア・構造に加えて、「どの物件を、どの会社が、いつ掲載していたか」まで追えるのが特徴だ。
「平均利回り◯%」という大づかみの情報では、こうした”情報の透明度”までは絶対に見えない。1つ1つの物件に紐づく掲載履歴を、街単位で積み上げて初めて、「この街は買い手にとってフェアか」が浮かび上がる。
本気で収益不動産に取り組むなら、ぜひ一度、Haroのデータに触れてほしい。あなたが狙うエリアの物件が、「比較できる市場」にあるのか「閉じた市場」にあるのか——雰囲気ではなく、数字で確かめられる。
▶ Haro(収益不動産プラットフォーム)| https://haro-app.jp
この記事のデータについて(必ずお読みください)
- 出典:Haroの物件データベース「R-DX」(市場に公開された一棟収益物件の情報を継続的に集計・分析したHaro独自のデータベース、約17.9万件・日次更新)。「1物件あたり業者数(重なり)」=1つの物件の掲載に関わった不動産会社の数(同時掲載・掲載の入れ替わりを含む)の平均。掲載利回り=掲載価格ベースの表面利回りの中央値(外れ値3〜25%を除外、2021年以降の新規掲載コホート)。東京23区+政令市20市を抽出。
- 「業者の重なり」は媒介契約の種類(一般/専任)を直接示すものではなく、情報の開かれ方の目安です。単独掲載の理由は「囲い込み」とは限らず、取引の少ない市場では自然に1社単独になります(本文ルール3参照)。
- 掲載利回り ≠ 成約利回り。実際に売買が成立した利回りとは異なります。
- 2026年は上期(1〜6月)の暫定値。標本が小さい都市(小N)は参考値です。
- データは匿名の集計値であり、個別の不動産会社名・物件は一切掲載していません。特定の会社の営業姿勢を批判する意図はなく、市場全体の傾向を統計的に示すものです。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断は個別物件の精査のうえ、自己責任でお願いします。
※本記事は2026年6月時点の公開情報に基づきます。
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